ショーペンハウアーさんも (少なくとも私には)難しすぎる主な著書がばーんと出版された後、みんなついて来れてないっぽいと思ったか、比較的読みやすい本が後からちょろちょろ著されてたりするが、本来この「読書について」も、そういう「主論文がどうしても分からない知識と理解力のない人向け」の本という位置づけなのかもしれない。結局この本は「お前らには時間とお金の無駄だから読書なんかやめとけ」という趣旨の「読書について」の本だ。そこが面白い。当時本は高価であっただろうしむしろ親切心かもしれない(違うかも知れない)。
第2段落もショーペンハウアーさん絶好調で、読書というものは他人にものを考えてもらうことであって、本を読む人は他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎないから、大多数の学者の如くたくさん本を読めば読むほど愚者になると述べてあって実に痛快極まりない。この「学者」というのが大嫌いなヘーゲルさんを指しているのかは分からない。しかしショーペンハウアーさんも職業として学者さんなんだし同僚や仲間からどう思われていたのだろう。人嫌いではあったかもしれないが割と友人は多くゲーテさんとかワーグナーさんとか友人も多かったようだけど同業者の友人はあまり多くなかったのか。ちなみにショーペンハウアーさんが(一方的に?)めちゃめちゃ嫌って、異常な対抗心を燃やし続けた(ように見える)ヘーゲルさんは当時大流行して多数の死者を出したコレラの疑い濃厚とされたにも関わらずベッドに寝かされたご遺体に感染を恐れぬお弟子さんやファンの弔問客が絶えなかったらしい。もっともヘーゲルさんの奥さんがうちの夫は絶対の絶対の絶対にコレラなんかじゃありません!とかなり強硬に行政側に手を回したらしく、記録に残された病状の経過からも現代医学的には心筋梗塞からの心不全が死因のようにも思える。